しお子、良かったよしお子…。
というわけでアニメ虹ヶ咲2期7話「夢の記憶」の感想を(栞子と薫子中心に)語っていきたいと思います。
栞子の言葉の「間違い」
栞子は、薫子が適性のないスクールアイドルの夢を追いかけたことで夢破れ、不幸になったと思っています。
そして終盤では
最後は、泣いていたんです。後悔していたんです。
と口にします。
この言葉は薫子によって否定されるのですが、栞子の言葉で間違っていたのは「後悔していた」の部分ではないと思います。
実際、薫子もその時は悔しかったと発言しています。夢破れた当時は後悔の気持ちもあったのです。
では栞子の言葉の間違い、それは「最後は」の部分ではないでしょうか。
「最後」っていつなんでしょうね。
話の流れ的に栞子は「薫子が泣きながら挨拶をしていたとき」つまり「夢がおわったとき」という認識で「最後」という言葉を使ったはずです。
ですがそれは「最後」なのでしょうか。
スクールアイドルとしての活動を卒業した薫子がその後大学生となり、今では教育実習生をやっているように、夢がおわってからもその人の人生は続いていきます。
そして彼女は今となっては夢を追いかけていた頃を幸せだったと言います。
一時の後悔も生きているうちに後悔ではなくなることもあるし、適性のない夢を追いかけたことが間違いだったなんてきっと一生言い切れない。
だから「スクールアイドルの夢を追いかけた薫子は最後には後悔して不幸になった」という考えは正確ではなかったのだと思います。
そして、薫子や同好会のみんなからの言葉を受け取った彼女は夢への一歩を踏み出し…。
栞子の目
EMOTIONのMV内では、途中で栞子が目を閉じて、終盤でまた目を開くシーンがあります。ここにどのような意味があるのか、少し考えてみました。
①夢のはじまり
今回の物語は、スクールアイドルを夢見るも薫子の涙を見て以来自分の気持ちを押し込めていた栞子が、同好会メンバーや薫子からの言葉を受けてもう一度夢に向けて歩き出すというお話でした。
そのあたりを踏まえると、栞子が目を閉じたのは「夢に向けて目を閉じる」つまり夢を諦めて、スクールアイドルをやりたいという自分の気持ちを見て見ぬふりするということを表しているように考えられます。
そんな彼女でしたが最後には目を開き、自分の夢をしっかりと見つめて再び歩み始める。
そして夢に向かう時間が進み出す…。
というのがひとつの解釈です。
②夢のおわり
目を開くときの栞子の表情を見ていると、自ら目を開けたというよりは、寝ている人が目を覚ましたときのような顔をしているように見えます。
そうなると、目を閉じてから目を開くまでの映像、スクールアイドルとしてステージに立つ栞子の姿は夢だった、ということになります。
そして夢の記憶(羽根や本といった夢の中で登場したアイテムたち)を見つめ、笑って歩いていく。
今回スクールアイドルとしての夢を歩き始めた栞子ですが、いつかその夢がおわる時はきます。(スクールアイドルは期間限定なので)
だけど、薫子がそうであったように、夢から覚めた後で夢の記憶を見返した時、それが幸せなものだったと気付ける。そして笑顔で現実を歩いていく。
これからは現実での時間が進み出す…。
そんな、少し未来の栞子を描いていたのではないでしょうか。
あるいは、薫子の心情を栞子が代わりに表現した、という見方もできるかもしれません。
②の考察については、正直自分でも「栞子がスクールアイドルを始めたばかりのMVで、スクールアイドルの活動が終わった時の話をするか?」とも思いました。
ですが、薫子がスクールアイドルの夢を追いかけたことで不幸になったと思っていた栞子が、夢に向かって踏み出すとなるのであれば、彼女の未来についてポジティブな描写をすることは重要なことであるはずだと思い、この考察もそこまで無理のあるものではないかも、と考えています。
あとこの考え方だと、栞子が開いたときは真っ白だった本が最後には文字で埋められていることも「栞子が既に多くのことを体験した=本に物語が刻まれた」という見方ができますね。
夢の記憶
さて、今回のサブタイトルである「夢の記憶」。
その言葉通り、今回は栞子の過去シーンが多く流れます。ここで、栞子の過去には薫子が深く関わっていることもあり、当然ながら栞子の過去シーンには薫子も同じくらい登場しており、ある意味薫子の過去シーンと言っても間違いではないくらいですよね。
そこで思ったのが、「夢の記憶」とは「栞子の夢の記憶」を意味すると同時に「薫子の夢の記憶」も意味していたのではないか、ということです。
栞子が薫子に憧れてスクールアイドルになりたいと、夢を見ていた頃の記憶。
薫子がスクールアイドルをしていた頃の、夢破れたが今では幸せだったと思える、夢を見ていた頃の記憶。
この2つを主軸に描いたのが今回のお話であり、今回のサブタイトルの意味ではないかと思っています。
…そういえば、1期でも7話は姉妹の物語であり、姉と妹の両者を示すようなサブタイトルでしたね。
おわりに
虹ヶ咲のアニメを観ていて、物語として面白いのはもちろんのこと、視聴者たちも何か新しいことを始めたり、夢に向かって頑張ろうと思えたりする力をくれる作品であるのが素敵だなと思います。
特に、1期13話を見て自分も夢を目指そうと思うようになったという感想をよく見かけます。
でも夢ってひたすらに良いものというわけではなくて、現実のところ、夢が叶わない人なんてたくさんいるし、それで泣いたり後悔する人もいる。
けど、それもいつしか幸せな記憶になるはずだということを、栞子と薫子を通して描かれた回だったかなという感想です。
第2回スクールアイドルフェスティバルという状況や、歩夢のセリフ回しなど、1期13話の「夢がここからはじまるよ」を連想させる要素が多々含まれていましたが、あれから夢を追いかけはじめた人たちにも向けて、もう少し夢というテーマについて踏み込んだお話だったのではないでしょうか。
…というわけで、今回は栞子と薫子の話中心に語りましたが、正直7話は好きポイントが多いので他の部分にも触れた記事をまた別に書く気でいます。
それでは、作者が八重歯と犬歯の違いをググった頃に、またお会いしましょう。