かすログ

ゆうぽむなんだね

愛と罪の話

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 というわけで5thアルバム『Fly with You!!』がリリースされたことで、ラブソングのフルが公開となりました。今回のラブソングで特に個人的に刺さった2曲について感想を書きたいと思います。

 スクフェス2で配信されているラブソング編のストーリーはまだ完結していない状況ですが、今回は曲とストーリーを絡めた話ではなく曲単体を聴いた感想ということで。

 

Walking Dream

 というわけで今回刺さった1曲目は歩夢のラブソングです。

 といっても今回は「ゆうぽむが〜」という話にはならないです。曲が生まれたのがスクフェス2の世界だから侑は存在しているとはいえ、この曲は自分の中では侑や「あなた」に対する百合CP的なものではなく、いつか歩夢が異性と恋愛することになった時の恋愛観を歌った曲のイメージだからです。(というか歩夢に限らず、明確に愛さん宛てと言っている璃奈を除けば全員がこのイメージです。)

 曲の中身の話に入りますが、この曲の歌詞は歩夢が相手のことを隅々までチェックしている様子や、他の子に目移りすることをダメだと断じている様子など、愛の大きさゆえの知識欲や独占欲が感じられる描写があり、見ようによっては「怖い」とも感じられる歌詞をしているなと思いました。

 スクスタでもアニメでも歩夢の尾行シーンがあったりと、これまで描かれてきた歩夢の人物像として個人的には腑に落ちる歌詞です。

 ただその一方で、メロディや歌声は終始一貫して可愛らしく、歌詞抜きで見れば可愛さ100%の曲と言っても良いくらいだと思います。これは歩夢の可愛さを引き出す大西亜玖璃さんの歌声がシンプルに凄いなと。

 よく考えると愛の大きさゆえに少し怖いと思える所もあるかもしれないけれど、基本的な所作などは可愛さで満ちている。そんな歩夢のキャラクターへのイメージがそのまま曲に繋がっているように自分は感じました。

 また、相手のことを監視(チェック)しつつ、相手が欲しがっていた靴を買ってあげているところには歩夢の献身的な性格が表れているのも好きなポイントです。

チェックしてた靴 買ってあるの ねえ

今すぐ帰ろう 私と

 余談ですが、ここの歌詞はスクフェス2で試聴した時は「買ってあるもんね」なのか「買ってあるの ねえ」なのかがハッキリ聴き取れなくて、「相手が以前チェックしてた靴を最近買ったことまで歩夢は把握している」という意味なのか「相手が欲しがってた靴を歩夢が買ってあげている」という意味なのか判断に迷って歌詞カード公開待ちでした。結果としては普通に後者でしたね。

 2番になると自分と相手の人が運命で結ばれた者同士であることを主張するかのような、「逆Pretender」みたいな歌詞だなと思いました。

 そして、その根拠が相性占い、星座、プロフなど占いの類ばかりなところに歩夢の少女趣味が出ているのかもしれません。

 自分は歩夢の特徴のひとつが今書いた「少女趣味」だと考えています。例えば、『Dream with You』のMVでは小さい女の子が好む童話『不思議の国のアリス』がモチーフになっているものが散見されたり。

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 その少女趣味の延長として、占いなどを好み、それを恋愛の根拠にするのが歩夢らしさということになるのかな、と。

 あとは、相手が他の子に目移りすることを「ちょっとだけ間違えた」と表現するセンスはかなり好きですね。

 「Walking Dream」という直訳すると「歩夢」となる直接的すぎるワードが曲名でもあり、曲中にもDメロを始め多数登場するわけですが、まさにこの曲は「Walking Dream(歩夢)」がたくさん詰まった、歩夢らしさ全開の曲なのではないでしょうか。

 また、この「Walking Dream」の連呼には少し言葉が強いですが洗脳(「サッカーやろうぜ!」的な)のような役割もあるのかなと思いました。あなたの頭の中を歩夢でいっぱいにしてみせる、みたいな。

 

 この曲について改めて考えた際に思ったことが、この曲はこれまでにも書いてきたように歩夢の「愛が大きい」という特徴と「可愛らしい」という特徴に加えてもうひとつ、スクスタなどで描かれてきた彼女の特徴……「普通の子」という要素も含まれているのではないかということです。

 先ほど、愛の大きさゆえの「知識欲」と「独占欲」というワードを出しました。

 これって別に歩夢が特別というわけではなくて、大抵の人間は何かを好きになった場合にこういう欲求が出ることはおかしくないのではないかと思います。程度と対象が違うだけで。

 人を好きになったら、その相手のことを知りたいと思うのは普通のことかと思います。人が恋人に浮気されたりした時に怒るのも普通のことだとは思いますが、これも人は恋人に対して一種の独占欲を持っているからではないでしょうか?

 「対象が違う」と先ほど書きましたが、例えばそれこそオタク趣味なんてそうではないでしょうか。

 対象が恋愛の相手とかではなくても、好きな作品、キャラ、アイドル、声優など、好きなものについて色々知りたいと思うのは大体の人はそうだと思います。

 また、「独占」という言葉は「独り占め」とも言えるわけですが、このアルバムに収録されている他のメンバーのラブソングでも「独り占め」というワードが含まれている曲って結構多くて、やっぱり独占欲って恋愛において普遍的な気持ちなのかなとも考えられます。

 このように、何かを好きになった時に知識欲や独占欲が出るのは多くの人にとって共通の「普通なこと」なのではないかと思うわけです。

 まぁ、大抵の人はその知識欲や独占欲が暴走して法を犯さないように境界線は守っていて、その一線を超えてしまう人のことを現代社会では「ストーカー」と呼ぶわけですが。

 この曲の歩夢がその一線を守れているかはどうなんでしょうか。歌詞を見ていると、あなたをずっと見つめていたい・あなたを閉じ込めたいという気持ちはありつつも、言えない・できないというようなニュアンスも感じることができて、これはちゃんと踏みとどまれている側の曲なのかな?とも思います。

 

 ともあれ纏めるとこの曲は、愛が大きくて、そんなところも含めて可愛らしくて、普通の女の子である上原歩夢らしさが詰まった曲なんだなという感想です。

 

咬福論

 現状自分の中で再生回数トップの曲です。メロディと歌声がひたすらに好きなのですが、ここらへんはかなり感覚的な好きなので理屈的にどこが好きかというのは割と難しめの曲でした。

 この曲についてまず語りたくなるのはやはり曲名についてでしょうか。

 栞子の歯は確かに彼女のチャームポイントだと思いますが、意外と作中でそこに触れられたことって少ないと思うんですよね。一方、ネットの世界では栞子に咬まれたい(?)という欲望を見かけることは多い気がします。それもあって、まさか公式で「咬」という字を出してきたということは衝撃的でした。

 「幸福論」と「咬む」という言葉を合わせた造語のような曲名にオシャレさを感じます。また、「幸福論」とかかっているだけあって、栞子にとっての「幸福とは何たるか」がしっかりと描かれているのが良いなと思います。

 あとこの曲、実は歌詞の中で具体的に栞子が相手に対してどんなことをしているのかって直接は言及されていないんですよね。痕(きずな)を残すとはどういうことなのか、相手が首筋を抑えるのはなぜなのか。歌詞中には答えは無いけれど、曲名を見れば「栞子が相手の首筋に噛み付いて傷痕を残す」という光景を思い浮かべるには十分な情報量ではないでしょうか。

 

 曲の中身の話に入ります。

 この曲でも当然栞子の恋愛観が描かれているわけですが、その中身については前述の『Walking Dream』とは2つの点で対照的に感じました。

 1つ目は意外性。『Walking Dream』については先ほども書いた通り、スクスタやアニメでも歩夢が尾行するシーンがあったりと、曲中で描かれている恋愛観は正直「まぁ歩夢ならこうなるよね」と割と想定内なものでした。

 一方、『咬福論』で描かれた恋愛観の内容は「栞子ってこんな恋愛を望むんだ!?全然予想つかなかった!」と驚くようなものでした。まずここが正反対ですね。

 2つ目は普遍性。『Walking Dream』はこれも先ほどの感想の終盤で触れた通り、自分はこの曲のように相手のことを知ろうとしたり、独占したくなるような気持ちは程度の差はあれど誰にでもあるようなものだと考えています。

 一方『咬福論』はというと、歌詞のどのあたりに注目するかにもよりますが、正直かなり特殊な恋愛観だと思います。この曲を聴いて「あー俺も恋人の首筋に咬みついたりしたなぁ」みたいに共感する人ってそうそういないのではないでしょうか?(「2人だけの秘密を持ちたい」という点でならもう少し普遍性は上がりそうですが。)ここも正反対な点です。

 

 この曲の歌詞で好きなポイントは、栞子の中にある相反する感情かな?と思います。

 縛っていたくもないけれど、「秘密」によって相手を縛っているようにも見える。恋人なら何しても良いなんて嫌と言いつつ、実際にしている行為は恋人だからといって全く問題が無いような行為ではないように思える。

 そんな、相手のことを大切に想う彼女の気持ちの中に微かに混ざるワガママな気持ちが魅力的な歌詞だと思いました。

 

 先ほども少し触れましたが、この曲はサビの部分になると中々変わった恋愛観が描かれていますが、1番2番共通してサビ前に「二人だけの秘密」というワードが出てくるように、この曲には「お互いしか知らない秘密を共有することで愛の証とする」という恋愛観も描かれています。

 後者の恋愛観は前者と比べてかなり共感しやすいですし、ロマンチックで好きだなぁと思いました。

 

 あとはこの曲、全体的にワードセンスが好きだなと感じています。

 「痕」と書いて「きずな」と読ませたりとか、「大好きをしよう」という隠語的な表現があったりとか。

肌身離さず持っていて

二人だけの秘密

 この歌詞の「肌身離さず持っていて」というのもかなり好きです。「秘密」というのが何なのかはこの後サビでわかるわけですが、確かに指輪とかよりも確実に肌身から離すことのできない、2人の関係性の証になるものですね。なんせ身体に刻み込まれているわけですから。

 一方で、そんな語彙力の高さが魅力的な曲の中で

想像だけでニヤニヤです

というストレートな表現があるのが逆に好きです。これはかすみのラブソングである『背伸びしたって』が全体的に大人っぽい歌詞の中で

いつまでもラブラブでいよう

とあるのが可愛らしく見えるのに似ている感覚だと思います。

 

 『Walking Dream』と『咬福論』について語ってきました。

 『咬福論』の話の中で、2曲の恋愛観は対照的に見えたという話をしてきましたが、ここまで2曲について考えてきた中で、逆に共通するポイントが見えてきました。

 それは「愛ゆえのインモラルな行為」です。

 『Walking Dream』は相手への愛ゆえに相手のことを監視してしまうような恋愛観が描かれていますが、これは見ようによってはストーカーという犯罪行為にもなり得ます。

 『咬福論』では相手に傷をつけることで愛情を表現しています。相手の同意があるので警察沙汰にはならないと思いますが、これも言ってしまえば傷害に値する行為とも言えるでしょう。

 どちらの曲も相手への愛を理由に社会的には悪とされるような行いをしているのです。アルバムを通して聴いても、そういう悪い行いをしているような曲ってこの2曲だけだと思うんですよね。

 愛ゆえに犯す罪。それがこの2曲に通じる概念であり、自分が惹かれた理由なのかな?と思いました。確かに、現実においてはさすがに肯定できませんが、創作物を楽しむ際においては愛のために罪を犯すような展開って割と好きかもしれません。

 元々は表題曲である『Fly with You!!』も含めて3曲の感想記事を書く予定だったのですが、この2曲の共通点に気付いたので今回はそれをテーマに2曲の感想を語ることにしました。

 

 というわけで以上、『Walking Dream』と『咬福論』の感想でした。書けそうだったら他の曲の感想記事も書こうかなと考え中です。